しのみや緩和ケア内科クリニックを開院してから、さまざまな方との新しい出会いが生まれています。
今回は、最近あった三つのうれしい出来事をご紹介します。
在宅療養を支える頼もしい仲間との出会い
9月5日、訪問看護ステーション人楽の皆さまと、民間救急・福祉タクシーを運営されている介護ステーション リバティさんが、当クリニックへご挨拶に来てくださいました。
開院後、奈良で在宅医療に携わる方々と顔の見える関係をつくっていきたいと考え、私から人楽さんへご連絡したことが、今回のご縁の始まりでした。
当日は、それぞれの活動や、これから奈良の在宅医療をどのように良くしていきたいかについて、さまざまなお話をすることができました。
在宅療養は、医師やクリニックだけで支えられるものではありません。
患者さんの暮らしを身近で支え、日々の変化に気づいてくれる訪問看護師。
通院や入退院、転院など、自力での移動が難しい患者さんを安全に送り届けてくれる民間救急。
さらに、訪問薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパーなど、多くの人が力を合わせることで成り立っています。
患者さんの状態が変化したとき、初めて連絡先を探すのではなく、普段からお互いの顔や考え方を知っていること。
それが、いざというときの迅速で温かい連携につながります。
身近な地域に、これほど頼りになる仲間がいてくださることを知り、とてもうれしく、心強く感じました。
これから一緒に、奈良の在宅患者さんとご家族が、安心して療養し、安心して最期の時間を過ごせる地域をつくっていきたいと思います。

関連リンク
訪問看護ステーション人楽
https://jinraku-official.com/
介護ステーション リバティ
https://kaigoliberty.hp.peraichi.com/
漢方という新たな可能性
9月7日には、大阪市で漢方専門薬局「御幸の漢方」を営む、薬学博士の岩井正憲先生が来てくださいました。
岩井先生とは、それまで面識がありませんでした。しのみや緩和ケア内科クリニックのホームページをご覧になり、私たちのビジョンに共感して連絡をくださったことが、今回の出会いのきっかけです。
直接お会いすると、漢方や生薬に対する岩井先生の思いは、想像以上に熱いものでした。
特に印象に残ったのが、漢方の「補剤」という考え方です。補剤とは、病気や治療によって失われた気力や体力を補うことを目的とする漢方薬です。がんそのものを治療するものではありませんが、患者さんの状態や時期に応じて、がん治療中の倦怠感や食欲低下などを支える選択肢となる可能性があります。
私自身も、以前からがん治療や緩和ケアにおける漢方薬の役割に関心を持ち、情報発信を続けてきました。
御幸の漢方では、全国でも珍しく、薬局内で独自のエキス剤を作って提供されています。自費での対応となりますが、通常の漢方薬とは異なる選択肢を希望される患者さんにとって、今後お役に立てる場面があるかもしれません。
ただし、漢方薬にも副作用やほかの薬との相互作用があります。
すべての患者さんに適しているわけではないため、使用する際には病状や治療内容を確認し、医師や薬剤師と相談することが大切です。
開院してホームページを作ったことで、これまで接点のなかった専門家が私たちを見つけ、連絡をくださり、実際に訪ねてくださいました。新しいご縁が生まれたことを、本当にありがたく思います。

関連リンク
御幸の漢方
http://miyukinokampo.jp/pc/
がん治療によく使われる漢方薬について
https://note.com/mainstream_tosh/n/n698a5e792e50
中学生から届いた共感力についての依頼
もう一つ、心に残る出来事がありました。
病気や障がいを持つ子どもたちと社会をつなぐ活動を行っている「Teamレモネード」で活動する、大阪の中学3年生の方から、新聞への寄稿依頼をいただきました。
依頼されたテーマは「共感力」でした。
誰もが簡単に言葉を発信できる時代に、自分の発言へ責任を持つこと。
そして、言葉の向こう側にいる人を想像し、他者への共感を深めることについて、小中高生へ向けたメッセージを書いてほしいというご依頼でした。
私は「言葉の向こう側にいる人」という題で、原稿を書きました。
緩和ケア医として患者さんやご家族と接するなかで、私は「あなたの気持ちはわかります」という言葉が、必ずしも相手を支えるとは限らないことを教えられてきました。
本当の意味で、他人の気持ちを完全に理解することはできません。
だからこそ、「あなたの気持ちを、私はすべてわかることはできません。でも、理解したいと思っています。だから、教えてください」という姿勢が大切なのだと思います。
共感とは、相手の気持ちをわかったと決めつけることではなく、わからないからこそ、わかろうとし続けることなのではないでしょうか。
完成した新聞を届けていただき、私の文章を読んだ方からも反響があったと伺いました。緩和ケアの診療を通して学んできたことが、中学生をはじめとする若い世代へ届いたことを、とてもうれしく思いました。
私のような大人に声をかけ、自分たちでテーマを決め、新聞という形にして社会へ届けていく。その行動力にも、心から感銘を受けました。
関連リンク
一つひとつのご縁を大切に
今回の三つの出来事は、それぞれ異なるものに見えるかもしれません。
しかし、私の中ではすべてつながっています。
地域で患者さんを支える専門職との横のつながり。西洋医学とは異なる知識と経験を持つ専門家とのつながり。そして、緩和ケアの心を若い世代へ伝えていく、未来へのつながりです。
緩和ケアは、一人の医師や一つのクリニックだけで完成するものではありません。
さまざまな立場の人が出会い、互いの考えを知り、力を持ち寄ることで、必要な人へ届けられるものだと思います。
これからも、一つひとつのご縁を大切にしながら、皆さんと一緒に「奈良を緩和ケアの聖地に」という目標へ向かって歩んでいきたいと思います。
しのみや緩和ケア内科クリニック
院長 四宮 敏章




